このプロジェクトの応募受付は終了いたしました
背景
紅麹は米などの穀類に醸造用カビの一種であるモナスカス属糸状菌を繁殖させた鮮紅色の麹で、食用色素として広く利用されています。紅麹の代表的な機能性成分であるモナコリンKはコレステロールの抑制に強い作用を発揮し、GABAには血圧低下に対する作用やリラックス効果があります。また強力な抗酸化作用を有する色素成分のモナスシンや抗菌作用のあるモナスカミック酸なども含まれ、病気の予防や健康の維持・増進が期待できます。
小林製薬は紅麹菌の伝統的固体発酵法による大量培養に世界に先駆けて成功し、その健康成分等の有用性に着目した研究を進めてきました。現在では紅麹の有効成分を活用したサプリメントの開発・販売に注力しています。
紅麹の二次代謝産物である機能性成分の中でも、モナコリンKを得るためには長期の培養期間を要し、多大な原料コストが掛かっています。これまでに培養期間を短縮するための様々な試みを行ってまいりましたが、現時点では満足な結果が得られておりません。
そこで糸状菌や放線菌の二次代謝や培養技術に豊富な知見を有する国内の研究者を対象に、共同研究パートナーを求めることにしました。提案者には開発に必要な量の紅麹菌を提供いたします。
小林製薬の紅麹菌の特徴
- 菌株:紅麹菌(Monascus属pilosus種)
- 製造法:固体培養法
研究室レベルでの製造法は以下の通り:
- 水で浸漬した精白米を水切りし、三角フラスコへ入れる
- 121℃で20分間煮沸滅菌する
- 紅麹菌を無菌的に植菌し、水分率を調整しながら培養する
- 他の菌にはない特徴:
- 他の糸状菌と比べて生育速度が遅い
- 黄麹菌が2~3日で菌体量が飽和するところ、紅麹菌は7日以上掛かる
- 二次代謝産物の中でもモナコリンKを生産する速度が遅い
- 乾燥重量比で2%作るのに平均で45日程度要する
- 無性世代と有性世代の両方を有している
- 酸性条件でも生育できる
- 他の糸状菌と比べて生育速度が遅い
関連する紅麹ウェブサイト:https://www.kobayashi-vs.co.jp/benikoji/index.html
これまでの検討内容
- 特開2000-106834
- 培養開始時に米類縁物(胚芽・糠)を添加すると、菌体量が8~3.1倍になり、それに伴ってモナコリンKの含量が5.7~8.6倍に高まった
- 特開2000-106835
- 初期生育温度を30℃で固定し、培養中期~後期の培養温度を2℃刻みに低下させ培養すると、22℃でモナコリンKの生産効率が最高となった
- 特開2000-106835
- 紅麹培養中の水分率を29~56%まで変化させた結果、水分率が36~41%でモナコリンKの生産効率が最高となった
- 特許第5283363
- 紅麹菌をUV条件(生存率5%)で処理し、作成した変異菌体300株についてモナコリンKの生産効率を確認したところ、元の菌株よりも10倍向上した
求める技術
本募集では①紅麹菌の生育速度を高める・②二次代謝産物であるモナコリンKの生産速度を高める・③菌体密度を高める・④その他を目的とした、下記のようなアプローチを想定しています。
- 物理学的アプローチ
- 温度/圧力変化・光/電磁波/音波照射・通電・振動/撹拌など
- 化学的アプローチ
- 各種物質添加・気相ガス組成調節など
- 生物学的アプローチ
- 共培養・ゲノム編集・遺伝子発現制御・代謝制御解析(メタボローム解析)など
大がかりな設備を必要とせず、比較的短期間で検証可能な技術を歓迎します。
期待する技術
特に下記のような技術に期待していますが、その限りではありません。
- 糸状菌の生育速度を高める技術
- 糸状菌の特定の二次代謝産物を優先的に生産させる技術
対象とならない技術
下記の技術は今回の募集の対象外とします。
- 糸状菌または放線菌を対象とした実績がない技術
- ゲノム編集以外の遺伝子組み換えを伴う技術
- 食品として利用できない添加物や製造方法を用いる技術
- 液体培地にしか適用できない技術
期待される提案者
提案者には糸状菌または放線菌を用いて上記の①~④を実現することで特定の二次代謝産物の生産効率を向上した実績を求めます。
提案者の機会
小林製薬は有望な提案者に対して以下の機会をご提供いたします。
- 研究に必要な紅麹菌の提供
- 初期検討の機会と費用の提供
- 共同研究もしくは研究委託(1件当たり最大で200万円)
書類審査を通過した提案者には、必要に応じて初期検討に必要な紅麹菌と費用をお支払いいたします。
初期検討で有望な結果が出た場合、共同研究もしくは委託研究契約をご提案いたします。
提案の応募方法
小林製薬のオープンイノベーションポータルサイトより提出フォームにご記入の上、ご提案ください。
小林製薬オープンイノベーションサイト:https://kobayashi.yet2.com/res/innovation-portal/need.jsf?needID=123115
応募期限: 2020年3月13日
本ニーズに関するお問合せ
株式会社イェットツー・コム・アジア(小林製薬ポータルサイト担当)
Tel: 03-5217-0217
Email: kobayashi@yet2.com