北大西洋セミクジラの個体数回復を支援する米国海洋大気庁(NOAA)の技術探索

yet2の技術スカウトプロジェクトは、絶滅が危惧されている北大西洋のセミクジラ(Eubalaena glacialis)を復活させるのに役立つのでしょうか?勿論です。

北大西洋のセミクジラは、米国とカナダの東海岸に分布する絶滅の危機に瀕している大型のクジラです。1935年から国際的に保護されているにもかかわらず、漁具への絡みつきや船との衝突などにより個体数の回復が遅れています。現在、様々な取り組みが行われているにもかかわらず、北大西洋のセミクジラはいまだに減少傾向にあり、残っているクジラは400頭にも満たないのです。

絶滅からセミクジラを救うために提案されている解決策の一つは、ブイレス漁具の位置表示技術を開発することです。この方法では、海底の漁具の位置を追跡するために現在使用されている浮縄(ロープなど)による脅威を取り除くことができます。この取り組みを進める上での大きな障害は、海中での漁具の配置を見極め追跡し、漁師、近くの船、取締機関にその位置を知らせるための手頃なシステムを開発することです。

 

幅広いソリューションのための技術スカウト

米国海洋大気庁(NOAA)は、yet2にブイレス水中物体位置表示のための新しいソリューションを特定するための技術スカウトプロジェクトを依頼しました。このプロジェクトを実現可能なものにするためには、低コストのシステムである必要があり、最初の展開場所から移動する可能性がある水中物体(漁具など)の位置を特定し、追跡し、ユーザーがその位置を検出できるようにする必要がありました。システムはロープレスであることが求められ、ブイ(浮子)や浮縄を使って位置を示すことはできません。

さらに、この技術には以下が必要でした。

  • 対象物の位置情報を迅速かつ正確に更新できること
  • 水中での展開時に海洋生物への影響を最小限に抑えることができること
  • 2~5年の短期間での実現が可能であること

 

多数の技術から現実的ソリューション候補への絞り込み

yet2は4ヶ月間で、NOAAチームが検討すべき41の関連する候補技術を特定しました。その中には、ロープレス漁業システム、市販されている技術やシステム、水中通信・測位・ネットワーキングシステムの新規学術研究などが含まれていました。また、音響・光学・電磁システム、新規手法、モデム、電力伝送技術なども検討しました。

NOAA/yet2チームがこれらのソリューションを検討した結果、以下の事がわかりました。

  • 本課題を解決する能力を持つ多くの企業やプロジェクトがソリューションを所有しているが、それらでは希望するコストの範囲内には収まらない。低価格化の可能性を持つデバイスはあるが、量産体制ができていないように思われる。
  • 音響デバイスは、最も広く使用されており、商業的に成熟しているため、開発コストが低くなり得る。
  • 信号処理は今注目の研究分野であり、定位精度を向上させ、必要な電力を削減し、範囲を拡大し、高価なコンポーネントへの依存度を低減させる可能性を持つ。

この技術スカウトプロジェクトから得られた最も重要な成果は、音響デバイスに関するものでした。yet2チームは多数の音響デバイスソリューションを特定し、最終的なソリューションの有力候補となりました。

 

産業分野:政府機関

所在地:マサチューセッツ州ウッズホール

従業員数:12,000人

米国海洋大気庁(NOAA)について:NOAAは、科学を通じて生活を豊かにする機関です。その範囲は、太陽の表面から深海底にまで及び、人々を取り巻く環境の変化について情報を提供し続けています。NOAAの使命は、気候、気象、海洋、コストの変化を理解し、予測し、その知識と情報を他の人々と共有し、沿岸および海洋の生態系と資源を保護し、管理することにあります。

主要統計

技術スカウティングプロジェクト期間:17週間

候補技術の精査:yet2は120以上の候補技術を精査し、範囲内または関連性が高いと思われる41の技術を特定しました。

課題:漁具の位置特定の為のロープ/ブイを使わないソリューション探索。

解決策:技術スカウティング

結果: yet2は、ロープレス漁業システム、通信・測位、水中装置、ネットワーク・測位、その他の関連分野において、41の関連するソリューションを特定しました。