革新的なアイデアを見つけるのは数字のゲームなのか?
yet2は、お客様のために様々なオープンイノベーションポータルサイト(OIポータル)を運営・管理しています。OIポータルを立ち上げた主な理由の一つは、知的財産のコンタミネーション(情報汚染)リスクから企業を保護するために、一本化された窓口を提供することです。
OIポータルの第二の主目的は、非常に革新的なアイデアを取り込む為のチャネルを提供することです。少数であっても優れたアイデアがあれば、企業は新製品を発売し、新しいトレンドを掴み、早い段階でマインドシェアや市場シェアを獲得することができます。しかし、OIポータルに提案される数多くの提案の中から価値あるアイデアを見つけ出すことは容易ではありません。
平均的には、yet2の専門部隊は、提出されたアイデアをフィルタリングし、4%をクライアント組織内の各専門部署に転送します。どのようにすればOIポータルを通じて応募されたアイデアから大きな成功に繋がるチャンスを見つけ出し最大化させることができるのでしょうか?20年以上の OI 運営経験から言えることは、本当に大きな成功を収める可能性は、提案の質を高める努力よりも、提案の数を増やす努力をする方がはるかに高くなるということです。したがって、品質に影響を与える事柄に時間や労力を費やすよりも、ポータルを促進するために様々なリソースを活用することに資源を集中させる必要があります。
提案品質の限界
アイデアを受け取る過程で、yet2 ― クライアント間で初期の調整を行った段階で、提案の質は通常必要十分なレベルに達していることがわかります。質の向上に役立つ標準的な初期調整には、以下のようなものがあります。
- 無関係なアイデアは他の部門に紹介する
- クライアントの関心分野に特化した要件/フィルタリング基準を追加する
- ポータルコンテンツを強化し、提案の中で比較価値提案(Comparative Value Proposition)を最適に表現する方法について提案者にアドバイスをする。
- 提案者が提案内容の重要な部分を明確にする機能を追加し、さらに有用な情報を収集できるようにします。例えばyet2のポータルでは、以下の点に注力します。
- 必要とされる情報を明確にする – 提案を評価するために重要な特定情報を得ることは重要ですが、提案者が提案意欲を減退させたりするような手法は取りません。
- フォローアップの明確化 – 目標収益規模、臨床試験、動物実験、持続可能性など、クライアント固有の基準に基づいて、提案者に連絡を取り、明確化を図ります。そうすることで、提案内容をより良く評価することができます。また、クライアントにとって理想的でない提案であっても、クライアントの次のステップを簡素化するために、関連する適格性/懸念事項を含めて提案内容を転送することができます。
上記のようなプロセス調整を行うことにより、提案の質が短期間に必要十分なまでに向上するのであれば、あとは、どのようにしてポータルを通じて質の高いアイデアを得る機会を増やすことができるのでしょうか?
なぜ量(提案数)がアイデアの質を刺激するのか?
yet2ポータルの全てのクライアントに共通して言えることは、クライアント組織内の専門部署へ送るような質が高い応募の数は、応募総数の増加とともに増加するということです。私たちがクライアント組織内の専門部署に送るアイデアは、クライアントの具体的な要望に基づいてyet2のフィルタリング専門家が承認した少数で質が高い提案です。
例えば、2017年から2019年までの間に、yet2ポータルのクライアントが受け取った総提案数は、4,708件から7,567件と約60%増加しています。同時に、クライアント組織内の専門部署へ送付されたアイデアは171件から307件へと約80%増加しました。
アイデアの質は正規分布に従っており、非常に優れたアイデアは正規分布曲線の裾部分にあると考えられます。アイデアの総数が増えることで、その裾部分にある優れたアイデアを捉える確率は高まります。統計的な観点から見ると、提出された307件のアイデアの中から得られる1つの貴重なアイデアを捕捉する確率は、171件のアイデアの中から得られる物に比べ80%増加しています。
提案の質が改善された後は、イノベーションのアイデアは数の勝負ということになります。OIポータルの認知度を高めることで、より多くのアイデアが集まり、結果として重要なアイデアを得る可能性を高めることになります。
提案数を増やすにはどうすればよいのか?
公開されたプラットフォームとマーケティングにより、オープンイノベーションポータルは、複数のオーディエンス、すなわちyet2ネットワーク、クライアントのネットワーク、そして複数のグローバルなイノベーションコミュニティへのアクセスを可能にします。
私たちは、以下のような追加のベストプラクティスを開発しました。
- クライアントの企業サイト、ブランドサイト、外国語サイトでの目立つリンク配置。例えば、あるクライアントでは、自社のウェブサイト上でポータルを宣伝したところ、提案数が5倍に増加しました。
クライアントのマーケティング活動
- ポータルの立ち上げ時のプレスリリースやソーシャルメディアでの活動/ポータルの大幅な変更。既存のイノベーションネットワークにポータルを紹介するだけでは不十分であり、マーケティング活動を通じてポータルをより多くの人に知ってもらえれば、提案数も増えます。例えば、あるクライアントは、プレスリリースによりポータルを発表し、提案を募集しました。プレスリリースの後、クライアントは提案数が85%増加しました。また、別のクライアントでは、2020年第3四半期に「イノベーション関連」のプレスリリースを2回行い、yet2ポータルへのリンクを掲載したプロモーションを実施しました。
- 会議や展示会でのプロモーションを実施しました。
- 検索エンジン最適化(SEO) – ポータルを見つけるためにユーザーの立場に立って考える。クライアントのブランドに特化したキーワードではなく、潜在提案者がOIポータルを見つけるために使用するキーワードに焦点を当てることによりアクセス数が増加します。
- yet2の追加的な取り組みは、知名度を高めるためのものです。
- ソーシャルメディアマーケティング:例えば、あるクライアントのイノベーション関連のプレスリリースを宣伝したところ、投稿数が25%増加しました。
- TechNeed(yet2によるニーズプロモーション)
- 月刊ニュースレター
- 関連する業界グループへのターゲットマーケティング
- 地域のスタートアップのホットスポットプロモーション
つまり、アイデアの質が初期調整後、上限に達した場合、より多くの貴重なアイデアを獲得するための鍵は、クライアント企業サイトでの有効なリンクの設置、クライアントによるマーケティング活動など、オーディエンスを拡大することにより提案量を増やすよう刺激することです。このように、革新的なアイデアを見つけることは、数字のゲームなのです。
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